日経平均株価は2000年以来の2万円台乗せ、東京証券取引所の市場第1部の時価総額は1989年12月のバブル経済期の水準を25年振りに更新。
野村アセットマネジメントの「日本企業価値向上ファンド(限定追加型)」の当初設定額は1000億円超を集める等々、日本株式全体に関する報道はポジティブなものばかりです。

 日経平均株価はどこまで、あるいはいつまで上昇するのか、時価総額はどこまで膨らむのかは神のみぞ知るところでしょうが、専門家の予測を総括すれば調整を挟みつつも当面強気(上昇)相場が続く可能性が高いと思われます。
 そんな強気の日本の株式市場でも、目を凝らすと水面下ではネガティブなことが起こっているようです(個別株式の不祥事等は除く)。

 日本の株価指数を対象とするETF(上場投資信託)が、約5年振りに上場廃止・繰り上げ償還となるのです。
東京証券取引所が毎月公表している「月刊ETF・ETNレポート(2015年5月版)」によれば、月刊の売買代金も約3兆5000億円(立会内のみ)と一時期よりは減少しているものの、ETF・ETN市場も株式同様に活況を呈していると言えることから、ETFの上場廃止・繰上償還は寝耳に水と言えなくもありません。

 表面上は活況を呈しているETF・ETN市場ですが、実態は一部の銘柄に売買が過度に集中しているいびつな市場なのです。
個別銘柄を含めた売買代金ランキングで連日のようにトップ3に入っている「NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス上場投信(野村アセットマネジメント)」が、月刊売買代金の7割前後をほぼ毎月占めているのです。
2015年5月末現在、ETF・ETNの上場銘柄数は211銘柄。
単純に言えば、残り210銘柄で月刊の売買代金の3割程度を分けあっていることになります。日々の市場では分けあっているという生優しいものではなく、たとえば、アベノミクス相場で日経平均株価の終値が初めて2万円台に乗せた2015年4月22日ですら、売買が成立しなかった銘柄は30銘柄を超え、値付率は85%を下回っています。ETF・ETNの利点は、いつでも売買ができる高い機動性(流動性)と言われていますが、ほとんどの銘柄では流動性が供給されていないために思うような売買ができない状況が恒常化しつつあるのです。

下記の図は2015年7月3日を取引最終日として7月8日に繰上償還となるETF5銘柄
7月図版データ.jpg


 すべて日興アセットマネジメントが設定したETFですが、同運用会社によれば上場インデックスファンドTOPIX100日本大型株は、新規設定後1度追加設定があったものの、残り4銘柄に至っては当初設定以来1度も追加設定は行われていません。
追加設定は行われない、言い換えれば純資産残高が減少していることだけが今回の上場廃止・繰り上げ償還の要因ではありません。
繰上償還に関する税制上の扱いが明確になったこともその要因と言われています。
 従来ETFを繰上償還するには、投資家からETF受益証券を回収して現物株を返却することが前提であったのですが、小口投資家である個人投資家に現物株を返却することは困難になるため、現金(お金)で返却することができるように関係省庁が確認。
 
 その後、繰上償還を受けた投資家の税制上の取扱いが定められたことも大きいと言われています。個人投資家は繰上償還が予定されているETFを保有している場合、上場廃止までに売却すれば上場株式等と同じ扱いが変わることはありません。
仮に上場廃止までに売却しなかった場合、ETFの受益証券が特定口座から外れることになり、償還時の価格が取得元本より高ければ、みなし譲渡所得として確定申告を行う必要があります。運用会社にとっては投資家の税制上の取り扱いが定められたため、上場廃止・繰上償還を行いやすくなったのは確かなようです。
 
 見かけ上はETF・ETN市場が活況であっても、一部の銘柄が賑わっているだけで、多数の銘柄の売買代金はじり貧状態と言わざるを得ないのです。上場廃止・繰上償還となった場合、個人投資家は半ば強制的に売却しなければならなはいため、売買が活況でないETF・ETNへ投資する際には、純資産残高を必ず確認するようにしましょう。

 ETF・ETNの値付率を考えれば、上場廃止・繰り上げ償還となる銘柄は増えると思われてならない。ポジティブに考えればETF・ETN市場の活性化(新陳代謝)になるのでしょうが、ネガティブに考えれば上場銘柄数を増やすことだけに邁進した取引所に責任の一端がある気がしてなりません。割を食うのは私たち個人投資家なのです。



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