~はじめに
ここ1年半の間で銀行や証券会社などの金融機関で口座を開設した際に、米国人か否かを確認する外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の届出書と併せて、「実特法」の届出書の記入を要請されたことはありませんか?

FATCAについては世間を騒がせた「UBS事件」や「パナマ文書問題」に絡んで相応の知名度があるようですが、FATCAに比べると実特法はそうでもないようです。本コンテンツでは、この実特法についてFATCAと比較しながらご説明します。


1.そもそも実特法って?
実特法は、「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税の特例等に関する法律」という、とても長い法律名の略称です。

2014年にOECD(経済協力開発機構)にて、金融機関等を利用した国際的な脱税および租税回避に対処するために、その国の外国人(非居住者)の金融口座情報を各国税務当局間で自動的に交換するための国際基準(CRS:Common Reporting Standard)が公表され、日本を含む各国がその実施に合意しました。

この国際基準に基づく情報交換制度に参加するために、日本にもともとあった実特法の一部を改正して2017年1月から施行されたものが、現在の実特法なのです。この点で、実特法は日本版CRSとも言われています。

この法律に基づき、金融機関に新規に口座を開設する個人・法人には、住所・氏名と併せて居住地国および外国人の場合は外国納税者番号を申告することが求められるようになりました。そして、2018年12月末までに金融機関は個人・法人を問わず全ての既存顧客の居住地などを特定することが求められています。

この目的は、金融機関等を利用した国際的な脱税および租税回避を防止するためです。金融機関は、実特法に基づき顧客から得た口座情報を所轄の税務署に年1回報告します。そして税務当局は、その国の外国人(非居住者)の口座情報を各国税務当局間で交換し、その中で国をまたいで租税回避などの怪しいことを行っている個人・法人が見つかれば、各国税務当局間で連携して対処することを可能とするためなのです。

特定取引と呼ばれる対象取引は、預金口座や株式・投資信託口座、保険契約などです。住宅ローンなどの融資取引が対象外である点は、FATCAと共通しています。


2.FATCAとダブっていない?
国際間の租税回避防止を目的としている点では、実特法とFATCAは共通しています。
それにも関わらず両制度が並存している理由は、先述した実特法のベースとなっているOECDの国際基準に基づく情報交換制度に米国が参加していないためなのです。したがって、金融機関への口座開設時には実特法とFATCAの届出が両方求められるのです。

もともとFATCAは実特法に先行して、すでに2014年7月から運用が始まっていました。また、後述しますが実特法とFATCAは制度の内容に相違点が多いことから、米国はあえてOECDの基準に参加する必要はないと判断しているのでしょう。


3.FATCAとの違いは?
同じ目的でも、実特法とFATCAの間には制度の内容に細かな相違点が多いのです。以下では、代表的なものに限定して列挙していきます。


3-1_金融機関の報告先と報告対象の違い
金融機関による、実特法に基づく届出先は先述のとおり所轄の税務署ですが、FATCAに基づく届出は米国歳入庁(IRS)です。
また、報告対象について口座開設者の氏名・住所・口座番号・残高などは共通していますが、これに加えて実特法が生年月日・居住国名・外国納税者番号であるのに対してFATCAは米国納税者番号が対象となります。
特定する対象について、実特法と異なりFATCAは米国人に絞っていることから、このような差異が出ています。


3-2_罰則規定の有無
実特法では、その届出を行わない個人・法人顧客や金融機関に対して罰則規定が設けられています。これに対して、FATCAにはこれに協力しないと表明する金融機関に対して懲罰的な源泉徴収制度(保有する米国株式・債券等からの利益に対し30%)があるものの、顧客や金融機関に対する罰則規定はありません。


3-3_確認対象外の口座開設
実特法では、先述の特定取引(預金口座、投資信託・国債・公共債・株式などの保護預かり口座、保険契約、年金契約など)のための口座開設はすべて確認対象となります。これに対してFATCAでは、その年の12月末時点で5万ドル未満の個人の預金口座は確認対象外との規定があります。


~まとめ
実特法とFATCAの違いについては、以上よりご理解いただけたかと思います。
金融機関で口座開設する際、実特法やFATCAの届出書類に限らず、なぜこうも同じような書類を書かされるのかという疑問をお持ちの方も多いと思いますが、たとえば犯罪収益移転防止法など昨今の世情を反映して制定された法律に基づくものがほとんどなのです。
本人確認等に関する金融機関の要請には、疑いをもたれないように誠実に対処することをおすすめします。



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