「Sell in May」
「Sell in May」―5月に売れという相場格言があります。
2013年5月22日、議会証言に臨んだ米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長(当時)が量的緩和第3弾(QE3)の早期縮小に向けた出口戦略に触れると、新興国から投資マネーが一斉に引き揚げられ、相場は大荒れとなりました。アベノミクス相場で順調に上昇してきていた日経平均も1日で1,000円超の大幅下落した、いわゆる「バーナンキショック」は記憶に新しいことでしょう。
 
ところが、先月の日経平均株価を振り返ると、株式市場は記録ずくめの相場展開となりました。日経平均の続伸は11営業日連続(6月1日も上昇し12連騰)となり、バブル期の1988年(13日連続)以来となる27年ぶりの長さとなりました。また、29日は171銘柄が年初来高値を更新し、「高値銘柄100以上」は15日連続に達しました。

これも2年ぶりの記録です。東証1部の時価総額も25年ぶりに最高を更新しています。蓋を開けてみれば今年の5月相場は18営業日のうち日経平均終値が下落したのは2日間だけで、株式市場の堅調さが際だった1ヶ月でした。

なぜ株価が上昇しているのか
 東京証券取引所が公表している投資部門別売買状況を見ると、今の株高の背景が見えてきます。個人投資家は一貫して株を売り超す一方、それを上回る勢いで買いを入れているのが、海外投資家と信託銀行です。
一般的に信託銀行の株式売買は、銀行本体によるものは少なく、年金基金の売買注文が多くを占めていると言われます。

また、最近の株式相場を見ていると経験上レアな動きをすることがしばしばあります。
例えば、日本株は米国株との連動性が高いと言われてきましたが、米国株が大幅に下落しているにもかかわらず、日本株は上昇したり、特段の材料もないのに突然相場の雰囲気が変わり、日本の株価が上昇したりするようなこともあります。「なぜ相場が上昇したのか」それを論理的に理路整然と説明することが難しいのが今の日本株なのです。

強いて言うなら、「誰かが買い支えているから相場が上がる」という事になるでしょうか。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、公務員らが加入する地方公務員共済組合連合会など3つの共済年金、かんぽ生命保険、ゆうちょ銀行、そして上場投資信託(ETF)買いを進める日銀。
いつの頃からか巨額の公的資金を運用する彼らは「クジラ」と呼ばれるようになりました。これら5頭のクジラに加え、最近は持ち合い株を含む政策保有株の受け皿として「6頭目のクジラ」が活躍するとの思惑が海外投資家に広がり、銀行株を押し上げています。

「日経平均がこれだけ上昇しているのに自分の持っている株はまるで上がらない。」そう嘆いている個人投資家が意外とたくさんいます。
その答えがここにあります。
クジラは巨額の資金量ゆえに時価総額の大きい主力銘柄を買わざるを得ません。今の相場を牽引しているのはこうした主力銘柄であり、個人投資家が好むような中小型株や新興市場は素通りしてしまいます。そのようなクジラの食指が動かない個人投資家好みの銘柄は、上昇すれば塩漬け株のヤレヤレ売りが出てきますから、上昇にも限りがあります。

最大の下落要因は「ブラック・スワン」
 今後、日本株がどこまで上昇を続けるのか?こればかりは誰にも予測できません。
しかし、現在の日本株の水準は決して割高ではないと考えられます。15年3月期ベースで18倍超だった日経平均採用銘柄のPER(株価収益率)は、決算発表が進み16年3月期ベースに切り替わるにつれ16倍台に低下し米国の20倍弱、ドイツの16倍強と比べて割高感はありません。

官製相場と揶揄される現在の相場環境では、株価が調整するような局面ではクジラの買い支えが入るとともに、一貫して売り超しに回っている個人投資家の待機資金が下値を確実に拾うことでしょう。

日銀が掲げる2%の物価目標は達成には程遠く、追加金融緩和の期待をマーケット参加者に抱かせることも皮肉なことに日本株の上昇要因です。したがって、現在は株価上昇の要因が整っている理想的な相場環境とも言えます。

下落要因として一般的に考えられているのは、米国の利上げやギリシャ問題などが挙げられますが、現在下落要因として考えられるようなことは、むしろ時間をかけて相場に織り込まれていくでしょう。最も恐ろしい下落要因は誰もが想像出来ない事象、「ブラック・スワン」の出現です。
ブラック・スワンとは、偶然発見された黒い白鳥のことで、それまで黒い白鳥は存在しないとされていた学説が、その発見によって覆されました。

われわれはブラック・スワンを発見してからでしか、ブラック・スワンを含む理論を作れないのです。
つまり、実際には相場の下落は現在では予想し得ない要因によって突然引き起こされる可能性が高いという事です。



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