2017年1月20日、ワシントンの連邦議会議事堂で「アメリカ・ファースト」を宣言したトランプ大統領の就任式から、早くも1年が経とうとしています。しかし、大規模な減税案や、移民問題対策、オバマケアの撤廃など、世界を騒然とさせた大統領選で掲げていた公約は、いったいどの程度達成できたのでしょうか?


就任後早々に、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を決定し、政府職員の離職後5年間のロビー活動の禁止や、イスラム圏6カ国の入国禁止命令などの大統領令を連発したトランプ大統領。

6月には地球温暖化防止を目的とするパリ協定を離脱。オバマ前大統領時代の環境関連の規制を撤廃し、化学兵器を使用したシリアへ巡行ミサイル攻撃するなど、派手な動きも目立ちました。

今回は、2017年9月27日に発表となった税制改革案を中心に、トランプ大統領が就任後1年で実現してきた成果を振り返ってみました。

注目の税収改革は?
レーガン政権以来の大規模減税を公約に掲げ、トランプ政権でも最重要視される税収改革。果たして1年の成果は?2017年9月27日に発表となった税制改革案から、注目を集めた3つのポイントを見ていきましょう。

1. 連邦法人税率の大幅に引き下げ…一部実現

トランプ政権の税収改革でも最大の焦点となった、先進国の中でも最も高いといわれる法人税率の大幅引き下げ。4月26日に発表した税制改革案の概要では、現行の35%から15%まで引き下げる方針を示していました。

しかし、その穴埋めの財源として期待されていたオバマケア(医療保険制度改革)見直し断念を受け、9月27日に公表された税制改革の新案では法人税は20%へ引き下げることが決定。米国では30年ぶりとなる大規模な法人税改革となりました。

議会で法案が成立すれば、日本やドイツよりも低く、主要工業国の平均22.5%を下回る法人税率となり、今後アメリカ企業の国際競争力が大きく強化されることが予測されます。

また、米企業の約95%を占めるとされている個人事業や小規模事業者(パススルー事業体)は、これまで個人所得として計算されていたため最高39.6%の課税となっていたところ、25%の課税まで引き下げとなり、税負担が軽減される見通しです。

2.所得税の最高税率引き下げ…一部実現

トランプ大統領の税制改革でもうひとつの大きな柱が、個人所得税の引き下げです。
最高税率を39.6%から33%まで減税し、また現在、10%~39%まで7段階に分かれている累進課税の税率を、12%、25%、33%の3段階まで簡素化することを掲げていました。

9月の税制改革案では、最高税率は35%へ引き下げ、税率は12、25、35%の3段階に簡素化することを発表し、最高税率を除き当初の案が実現しています。ただし、それぞれの税率が適用される、課税所得金額については、まだ示されていません。

3.低所得者層の所得税免除…未達成

アメリカで広がり続ける所得の格差を是正するため、年収570万円以下の夫婦世帯や、年収280万円以下の単身者の所得税を免除すると公約に掲げていたトランプ大統領。

9月の改正案では、所得税の計算で所得金額から差し引くことができる基礎控除の額を現在の2倍まで拡大することも盛り込み、個人の税負担を減らす方針です。

しかしそこで示された標準控除は、夫婦合算で24,000ドル(約270万円)、単身者なら12,000ドル(約135万円)と公約で示されていた数字まではまだまだ遠く、いまだ実現はされていません。

オバマケア(医療保険制度改革)の完全撤廃…断念
大規模減税で、今後10年間で約2.2兆ドルの税収減が試算されているなか、その穴埋めと目されていたのがオバマケアの見直しです。

しかし、この改正法案はトランプ大統領率いる共和党内でも支持を得ることができず、3月下旬の段階で早々に撤回。9月28日にオバマケア見直し法案の採決を断念すると発表されました。

オバマケアの見直しで支出を減らし、大型減税や10年で1兆ドルと公約していたインフラ投資の財源の一部を確保する目算が頓挫したことで、政権運営に対する不安が高まっています。

「国境の壁」は実現できる?…難航中
「アメリカ国民の仕事を奪い、不法活動を行っているメキシコからの移民を防ぐため、国境に万里の長城のような壁を作る。費用?当然メキシコ持ちで。」

メキシコの不法移民と麻薬密輸を阻止する「国境の壁」の建設は、トランプ大統領の選挙戦でも中心的な公約のひとつでした。

公約では国境沿いの約3100kmすべてに壁を建設することを掲げていましたが、7月の段階で1100~1400kmと、山や川を避けた全長の半分以下の距離で対策を検討との考えを示唆。
当初から国境の壁については、費用や技術の面からみて実現は困難と指摘されていたこともあり、より現実的な計画へ切り替えたと見るべきでしょう。

また6月には、国境の壁に太陽光パネルを活用するアイディアを披露して、記者団から「冗談か?」と質問される一幕も見られました。

国境の壁建設にかかる費用は約220億ドル、完成までには3年以上かかると見込まれています。トランプ大統領はその費用をメキシコが負担すべきと主張していますが、当然メキシコ側はこれを拒否。いったん米予算で拠出してメキシコから回収する手段を見つけるとしています。

野党民主党はこの国境の壁建設案に強く抵抗しており、対してトランプ大統領は、2018年度予算案に壁建設費用を盛り込まなければ、政府機関閉鎖の瀬戸際に追い込むと発言。
これを受けた市場は嫌気を示し、8月23日にはドル・円が反落する動きも見られました。

10月8日にも改めて予算計上を要求していますが、民主党は交渉の余地はないと反発しています。
今後も妥協点を見つけることは難しく、トランプ政権のアキレス腱のひとつと言えそうです。

まとめ
アメリカ大統領の任期は4年、すでにその4分の1が過ぎ去ろうとしているトランプ政権。
その政策や実行力には、賛否も評価も大きく分かれますが、トランプ大統領の言動の一つ一つが、アメリカのみならず世界の政治と経済を大きく動かしていくことだけは間違いありません。

「トランプ革命」は、まだまだ始まったばかりです。世界中の投資家が注目してきた9月27日の税制改革案は好感され、株価は堅調な動きを見せましたが、米国では大統領は一人の権限で法案を通すことはできないため、今回の税制改革が上院、下院の採決で承認され、本当に実現するのか、今後も引き続き、注視する必要があるでしょう。


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