2016年5月1日、インターネット通販サイトの最大手「Amazon」の日本法人アマゾン・ジャパンが、株式会社から合同会社へ移行し、社名を「アマゾン・ジャパン合同会社」へと変更しました。その狙いとはいったい何か?本稿では合同会社という会社形態とそのメリットについて解説します。

これまでもApple Japan、シスコシステムズ、そしてウォルマート系列の西友など、大手外資系企業の日本法人が、次々と株式会社から改組を選択してきた「合同会社」という会社形式。
はたしてそのメリット、そしてデメリットは、どこにあるのでしょうか。


法人の設立を検討するなら、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の、4つの法人の設立形態から選ぶことになります。
なかでも脚光を浴びるのが、2006年の会社法改正で、新たな設立形態として制定された「合同会社(LLC)」

株式会社に比べ、小規模なスタートアップ企業に向いた会社形態というイメージが強かった合同会社ですが、最近では、Amazon、Apple、西友など大手外資企業が、株式会社から合同会社へと転換する動きも加速しています。

今回は、その人気の背景にある、合同会社を設立するメリットとデメリットについて解説します。


合同会社を設立する3つのメリット
①設立コストは6万円~、手続きも簡単

起業の活発化を目的のひとつに掲げる新会社法により、会社設立にかかる手間とコストは大幅に削減されました。
新たに制定された合同会社は、株式会社と同じ税制で節税のメリットが受けられる上、株式会社と比べて設立コスト・ランニングコストともに安く、手続きも手軽に設立可能な会社形態です。

まず設立コストで見た場合、株式会社を設立するには定款認証手数料(5万円)がかかりますが、合同会社では原則不要です。
法務局の登記免許税に必要な下限額も、株式会社では15万円のところ、合同会社では6万円と、株式会社よりおよそ14万円低いコストで会社を設立できます。

また、株式会社と違い、決算公告の義務のない合同会社では、決算公告の手間がかからず、官報掲載にかかる費用(約6万円)も不要です。
さらに、役員の任期が最長10年と定められている株式会社では、任期ごとの改選で定款を書き換える費用が発生しますが、役員に任期が定められていない合同会社は、このコストも不要になります。


②合同会社は、株式会社とおなじく「有限責任」

法人を設立するとなれば、万が一倒産したときのことまで検討しておく必要があります。
個人事業、合名会社、そして合資会社の一部社員は、事業破綻・倒産等に陥ったばあいに「無限責任」が発生します。つまり、会社が倒産した時、残った債務の返済義務は、出資した個人が追うことになるのです。

しかし、株式会社や合同会社では、仮に出資した会社が倒産したとしても、自分が出資した額以上を失うことがない「有限責任」と定められています。そのため、株式会社同様に、幅広い出資者から資金を募ることも可能です。


③利益分配比率の設定や、経営の自由度が高い

株式会社の配当は、株数に応じて割り当てられます。つまり、多く出資した人ほど、より多くの利益分配が得られる仕組みです。
一方、合同会社の利益配分比率は、出資比率とは別に、社員(=出資者)の業績に見合った配当を、定款で自由に定めることができます。

また、株式会社の最終的な意思決定を行う多数決では、出資者(株主)の持ち株の多さが、議決権に直結します(1株1議決権)。つまり、大口株主が経営者を上回る発言権をもち、経営の方針に介入することもあり得ます。

対して合同会社では、出資の多寡にかかわらず、出資者1人あたり1議決権を持ちます(1人1議決権)。
株主総会の設置義務もないので、社員同士のシンプルな運営手続きで、経営方針を決定できる会社形態です。


合同会社を設立する3つのデメリット
設立コストの低さ、出資者の有限責任、経営の自由度の高さ。
他の3つの会社形態から「良い所取り」をしたようなメリットを持つ一方で、合同会社にも設立前に注意しておきたいデメリットがいくつか存在します。

①合同会社のままでは上場ができない

まず、合同会社のままでは上場できません。
とはいえ、合同会社から株式会社は容易に組織変更もできるので、これは必ずしもデメリットとは言えません。設立が簡単な合同会社からスタートし、事業が軌道に乗り、投資家などから幅広く出資を募る段になったら、社員全員の同意と債権者保護手続を行えば、株式会社に組織変更できます。


②経営の自由度の高さで、混乱が生じるケースも

3つ目のメリットとして挙げた、合同会社の経営の自由度は、裏を返せばデメリットにもなります。
社員=出資者になる合同会社では、業務執行権を持つ社員同士で問題が解決できない場合、意思決定まで混乱が生じることもあり得ます。
また、利益分配の比率を自由に決められることは、利益の分配を巡って社員同士で不公平感が生まれることにも繋がります。


③法人格としての知名度の低さ

合同会社の最大のデメリットとして挙げられるのは、法人格としての認知度の低さです。
株式会社と比べた場合、BtoBのビジネスや、人材の採用広告等で、信用面で劣って見られるケースがあることは否めません。

また、合同会社の社長は「代表取締役」ではなく「代表社員」という肩書になります。合同会社との取引実績がまだ浅い中小企業との交渉では、この耳慣れない肩書に説明を要することも。

しかし、合同会社の設立数は、会社法が改正された平成18年の3,392社を皮切りに、平成26年には19,808社と右肩上がりに伸び続け、その知名度もまた、年々向上しています。
※数字は法務省の白書(登記統計 統計表)による。

もともと合同会社は、米国のLLC(Limited Liability Company)を手本に制定された制度です。

今回、Amazon日本法人が株式会社から合同会社へ改組したケースをはじめ、これまでもApple、西友、ユニバーサルミュージックなど大手外資系企業の日本法人が続々と合同会社へ組織変更を進めています。

今後、こうした国内で活躍する合同会社が増えるにつれて、「株式会社」>「合同会社」という日本国内のイメージも、次第に覆されていくことが予測されます。





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