TPPとは
 10月5日、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の参加12カ国の閣僚は、米国で行われた会合で大筋合意しました。同協定は米国や日本、オーストラリアなど太平洋を囲む国々でルールを統一する枠組みで、モノの貿易だけでなくサービスや投資分野でも高水準の自由化を目指しています。

 参加国を合計した人口は約7億7000万人で世界全体の1割強、貿易額で1/3、GDPに至っては4割近くを占め、協定が発効すれば世界最大の自由貿易圏になる見通しです。ちなみに、中国と韓国は興味を示しているもののまだ参加していません。

関税撤廃となる品目は?
 日本はこれら参加国に年間20兆円規模の工業製品を輸出していますが、協定により関税撤廃となる品目の割合は発効直後で86.9%、最終的には99.9%になります。また農林水産物の輸入では、全2328品目のうち米や牛肉などを除く1885品目、比率にすると81%の関税が撤廃されることになります。

 国内産品の競争力には大きな差があるため、当然TPPによる損得はそれぞれ異なります。一般消費者は安い輸入品が入ってくる恩恵を受けますが、生産者側では概して工業製品や一部のサービス業でプラス、農林水産品にはマイナスと明暗が分かれます。

メリットを享受する業界
 得をするのは、まず自動車およびその部品メーカーです。ただ、完成車では最大販売先の米国が現在2.5%の関税を撤廃するのに25年もかけることや、日本メーカーの現地生産も進んでいるため、恩恵はそれほど大きくないものとみられています。自動車部品では米国が金額ベースで8割を超える品目で関税を即時撤廃するので、メーカーによっては大きな恩恵を受けることになりそうです。

 また、外食、小売業者や食糧に強い商社は総じてTPPを歓迎しています。農林水産品の関税が下がれば外食産業は原価を下げる余地が広がり、大手のスーパーやコンビニでは広く海外から割安な商材を調達できるようになり、商社は新たな輸入先開拓も含め取り扱いが増えるからです。銀行や小売業では規制緩和によりマレーシアやベトナムでの出資や出店が容易になります。

デメリットに苦しむ業界
 他方、割を食う代表格は農林水産業でしょう。米や牛肉・豚肉などの「重要5項目」ではなんとか関税を維持できましたが、米と乳製品は輸入制限枠が拡大、牛肉・豚肉では関税が段階的に下がる予定です。

 つい先日、農林水産省はTPPによる農産物への影響をまとめ多くの品目で「限定的」としましたが、生産者の多くは納得していないようです。同省は、日本の農産品は品質と安全性が高いので輸入品との棲み分けができるといいますが、今後、消費税引き上げや高齢化世帯の収入が減って国民生活全般が厳しい方向に向かうなか、果たしてそううまくいくのでしょうか。

関税以外にも影響が
 TPPの議論はとかく関税に集中しがちですが、そのほかの重要な問題も孕んでいます。多くの専門家が懸念するISD条項(Investor State Dispute Settlement「投資家対国家間の紛争解決条項」の略)はそのひとつです。これは、海外企業が日本の制度急変などで損害を受けた場合、国際的な訴訟を起こすことができるというものです。

 例えば、米国の民間製薬企業の薬価を低く決定するとその企業から価格の見直しを迫られ、日本が主体的に薬価を決めることが困難になる可能性があります。また、米国の民間医療保険企業が日本市場を開拓するために、日本の公的医療保険制度の給付範囲の縮小を求めてくる可能性もあります。同様に、米国の民間輸出企業等から食品安全基準の緩和を迫られるとの危惧もあります。

 同条項を含めTPPの規定には国内法を上回る強制力を持つものもあり、それへの抵触を未然に防ぐために日本国民からみれば法律の改悪があるかもしれません。最近米国と自由貿易協定を結んだ韓国では、60以上の法改正が必要といわれています。TPPの合意内容はいまだベールに包まれている部分も多く、それが徐々に明らかになるのは年明けの通常国会になる見通しのため、今後も目が離せません。

今後の行方
 政府はTPPによる関税撤廃効果だけで実質GDPを0.66%押し上げる要因になると試算しています。それでも、消費者の集中する都市と農林水産業の従事者が多い地方との格差は、今後縮まるどころか拡大していくような気がしてなりません。

 協定が実際に発効するには各国内の承認が必要なため、あと2年近くかかるという見方もあります。それまでに各国政府は激変緩和措置などの対策を講じる必要に迫られています。



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