教えて投信先生!! 新興国株式で損する理由

2019/04/02

最近では海外株にも手軽に投資できるようになっており、株式投資を考える場合でも日本株が唯一の選択肢ではなくなっています。海外株の選択肢は幅広く、思い切って新興国へ投資する個人投資家も増えているようです。最近では新興国人気がやや下火になりつつありますが、インド等は依然として人気エリアとなっているようです。

本日は新興国株式に投資する場合の様々なリスク面にスポットライトを当てたいと思います(特にインド株式)。新興国の経済成長率は高いことが多く、投資家の多くも新興国株式には大きな上昇期待を持つ傾向があります。もちろん、高い経済成長率は株式にとって明らかなプラス要因ですが、新興国株式には特有のマイナス要因が存在していることも忘れてはいけないポイントです。したがって投資家はプラス要素/マイナス要素の両方をよく把握しておく必要があります。

今回も金融機関新入社員の横田くんに登場してもらい、新興国株式に関して投信先生から教えてもらうことになりました。

≪本稿のまとめ≫
・経済が伸びている国でも株式が上昇するか否かは分からない
・一国の経済成長と株式リターンには負の関係があるという研究もある
・経済成長の果実はどこに落ちるかわからない(株主とは限らない:消費者、政府等)
・政治がそこに絡んでくることも多い(未成熟な政治体制リスク等)
・株式リターンは経済成長、為替、投資家の期待、増資など様々な要素から影響を受ける
・「新興国株式だから魅力的」という単純な判断は危険

横田くん:
新興国に対する注目度は少し落ちてきていますが、インドは投資先として人気エリアみたいですね!せっかく株式投資するなら、やっぱり大きく伸びている地域を選びたいですしね!

投信先生:
確かにインドは人口も多く(しかも若い人が多い)、2030年を待たずに世界一の人口大国になる可能性が指摘されているね。また7%を超える経済成長が期待されており、中国とは好対照。多くの日本人にとって、インドは高度経済成長期の日本を思い出させるのかもね。インド株で運用する投信では運用残高が4000億円を超えるものも出てきており、ちょっと驚きだね。

横田くん:
4000億円か・・・ 私たちもお客様にもっと積極的に営業して、早く追い付かなきゃ! まずはインドの素晴らしさ、高い経済成長率などをお客様に知ってもらう必要がありそうです! さっそく資料を作って頑張ります!

投信先生:
ちょっとまって!1点注意してもらいたいことがあるよ。直感的には、高い経済成長率は高い株式リターンを想像させるかも知れないけど、10年程度の時間軸では必ずしもそうならないケースが結構あるんだ。これは知っておいた方が良いかも知れない。株式にとって経済成長は間違いなく重要な要素だけど、株式に影響を与える要素は他にもたくさんあるからね。

横田くん:
先生は相変わらず水を差してきますね・・・でも経済が順調に成長すれば株価も順調に上がる、これって常識ではないですか??

投信先生:
でも、(図表1)を見てごらん(図表2は図表1をグラフ化)。一見しただけでも、経済成長(実質GDP成長)と株式リターンにあまり明確な関係が見て取れないでしょう?

この期間では、むしろGDP成長率と株式リターンにはマイナスの関係が存在している。因みに、(図表1)は経済成長=株式リターンとならない期間を敢えて選んだわけではなく、他の研究では100年以上の期間を取っても両者の関係はマイナスであると結論付けているものもある。例えば、ジェレミー・シーゲル(ペンシルベニア大学教授)は著書の中でこの点を実証している。この二つの研究結果を以って経済成長と株式リターンは無関係であると結論付ける必要はないと思うけど、経済成長率の高い地域へ投資すれば儲かる、と単純に考えるのも危険だと言えるね。

(図表1)

(図表2)

横田くん:
確かに・・中国は最も経済成長が高かったですが、株式リターンはマイナスですし、ロシアとマレーシアの経済成長は同レベルですが、株式リターンは真逆ですね・・・でも、なんでこんなことになるのですか?? さっぱり理由が思いつきませんが・・・

投信先生:
理由はたくさん考えられるけど、まず株式リターンにとって経済成長が重要なのは確かだけど、唯一の要素ではないということだろうね。

例えば、米国航空業界は過去60年以上の歴史において、プロペラ機からジェット機に変わり、人の移動を劇的に改善させた大きな実績がある。でもその果実を得たのは実は消費者であり、株主ではなかった(米国航空業界は倒産の歴史)。航空会社同士の競争があまりに激しく、運賃競争による価格下落が一方的に消費者の利益になってしまった感がある。この例は経済成長の果実を株主が得られる保証はないことを示している。

また中国の株式時価総額は93年ゼロから2011年3兆ドルまで拡大しているけど、この間の株主リターンは年率▲5.5%のマイナスだった(図表2)。株式時価総額は巨大になったけど、そのほとんどが新規上場だったことを示している。資金を市場から集めて、それを投資すれば経済は成長するかも知れないけど、当初出資した人にとってリターンが上がるかどうかは全く別の話だ。企業が増資をして資金調達を行い、その資金で完全に無駄な投資を行った場合(例:巨大な穴を掘って埋め戻す)、経済成長にはプラスだけどその企業の株主には全く利益は残らないでしょう?株主リターンをプラスにするには、その投資が何らかのリターンを上げる必要があるからね。

横田くん:
なるほど・・・確かに経済成長の果実を株主が得られる保証はない、企業の投資が収益を上げる保証もない、という部分は理解できます。でも、今一つ納得できない部分が残るというか、なんか感覚的に腹落ちしない感じです・・

投信先生:
誤解があってはいけないけど、株式リターンにとって高い経済成長率は明らかにプラスであり、この部分にあまり議論の余地はなさそうだね。問題なのはそれを阻害する他の要素がどれだけ存在するかという点だと思う。

例えば為替が典型例だよ。日本人がインド株に投資すれば、当然為替の問題が発生するよね?ルピー建ての株式リターンがいくら高くても、ルピー安がそれを上回れば外国人にとってのインド株リターンは低くなってしまう。つまりインド株リターンを計算する場合でも、誰が投資するかでリターンは変わってきてしまう。別の例として「投資家の期待」の問題もある。株式市場が高い経済成長を事前に織り込んでいた場合、事後的な結果がその期待を下回れば、株式市場は下落する可能性がある。つまり10%成長が事前に期待されていた場合、6%成長が実現しても株式リターンはマイナスになることがある。

横田くん:
?? 先生! もう少し分かり易い具体例で説明して貰えますか? 完全に消化不良に陥りました・・・

投信先生:
確かに具体例を見てもらった方が早いかも知れないね。それではインド株式の実例を見ながら説明しよう。

横田くん:
待ってました! 実例の方が分かり易いので、簡単な説明でお願いします!

<ここまでのまとめ>
・経済成長率と株式リターンは負の関係になるケースがある
・株式リターンに影響を与える要素は経済成長率だけではない
・経済成長の果実を手にするのは株主とは限らない(消費者、政府など)
・株式リターンにとって経済成長以外の要素がマイナスに作用することがある
⇒外国人投資家にとっての為替(通貨安)
⇒企業の非効率な投資や増資
⇒高過ぎる投資家の期待(高いPER)

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